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理療教育課程一年 博文
カッコウの声に目覚めて今日もまた脳みそのしわひとつ増やさん
国リハの暮らしの中に歌ありて友らのこころ思いて読めり
理療教育課程一年 和幸
ボランティアと会話しながら歩き行くつかまる肩にめぐらすイメージ
理療教育課程一年 紀雄
満天の星空の下想い寄せ流れる星に願いをひとつ
切なさと少しばかりの夢と希望梅雨空の下センターの生活
夕暮れに心和ます水無月の雨に輝く紫陽花の花
理療教育課程一年 健宏
朝もやにかすかに響く鳥の声今日ひと日の授業を思う
理療教育課程一年 智子
振り返り時の流れを感じつつ今日も生きむまた一歩ずつ
思いさえ打ち明けられず日々過ごす暮れゆくときの水無月の空
理療教育課程一部二年 清
風乱れ花びら散りてこの朝を我は学ばん心新たに
こっくりとさえずり聞きて船をこぐ草木薫る午後のひととき
あじさいの霧雨に濡れ寂しげに日々色濃くて朝日に光る
理療教育課程二年 敏雄
映画館映る画面に目を向けてぼんやり入る顔懐かしい
早起きしグランド行けば音楽が聞こえてくるよラジオ体操
このままの視力を保ち五年後にどんな色彩目に映るかな
理療教育課程二年 博雄
ただひとり帰り来りてお茶を飲むほのかににおうアジサイの花
白杖を友とつき行く昼下がり蕎麦の匂いについ誘われる
朝早く駅へと向かうこの道で方向失い立ち止まりいる
理療教育課程二年 和明
梅雨空にふと思い出す田舎の空芋の苗植え昔のことを
週末に我が家に残るおやじひとり気にかけつつもセンターに戻る
理療教育課程二年 豊延
薄れゆく入り日眺むる我が心なぜか明るし願いのありて
晩秋の風に吹かれて土匂う田舎の駅で列車待つ我
休日を家に帰らず本を取り開けど出るのはため息ばかり
やらねばと思う気ばかり先に立ち休み日ひと日はやく過ぎたり
さわやかに小鳥さえずる森の中都会離れて妻と子とあり
理療教育課程三年 寿彦
地と空の間に立ちて眺むれば峰また峰に雪のひかれり
ラジオから情報聞きつつにっぽんの北から南へ冬はかけ足
理療教育課程四年 永久
寝付かれぬ夜ラジオにもあきあきしイヤホン外し虫の音を聞く
犬を飼い寝不足続くと愚痴を言うそんな妻にも喜びが見え
夕焼けに向かって急ぐ家路かな木犀の香りに包まれながら
風花が首筋でとける冷たさに襟巻きを直しわが歩みゆく
同窓会案内状の返事には近況も書けず不参加にただ丸
理療教育課程四年 健夫
老いてなおひとりで暮らす老人は同じこというあん摩受けつつ
週末に家に帰りて草刈りぬ腰の痛みに横になりたし
何処からか祭り太鼓が聞こえくる机に向かい我落ち着かず
理療教育課程二年 洋子
花に逢い君に逢う日の空優しく白杖持つ手のこの軽やかさ
この耳もこの目でさえもいらないよ君の苦しみわかるのならば
君の手が囁いている笑っている夕日の中のその愛しさに
夕暮れに反対のホームに立つ君の聞こえぬ耳に届けこの手話
理療教育課程二年 美佐
枯れし葉を一枚拾いまた拾いいよいよと知る冬の訪れ
窓明かり映るあなたの人影に時間を忘れて立ち止まりたり
木漏れ日の入りし窓に頬を寄せ光の中にこの朝ひとり
君のいるところはいつも陽がありて我も光に包まれている
どこまでも行きたいと思うこの道をまっすぐ歩むゆっくり前へと
理療教育課程二年 かほる
長椅子にもたれて老母は身をまかすつたない灸に万感込めて
ともすればくじけて折れて弱音吐く奮い立たせるアイネ・クライネ・ナハトムジーク
師の腕に鍼管立てて我は打つけっぱる心に鍼たどたどし
志す日々のハードル乗り越える後ろに深き師のまなざし
二学期を終えて安堵のこみ上げる真っ青な空雲一つない
理療教育課程二年 輝彦
肝機能気にしながらの飲み正月小言言われて盃更にすすむ
初日の出離れし街で迎えるも祈る思い一つになりて
理療教育課程二年 斉
杖つきて道に迷うもまた楽し人の情けを知るよすがなり
雲切れて照らす日ざしの懐かしさ再び虫の鳴き始めたる
顔をさす日の朝ごとに遅々として身にしみて知る冬の訪れ
机にて肘つきおれば昇る日の顔にさしいる暖かにして
指をあて腿でまわせば冬の陽の部屋一面に輝くひととき
杖を手にホームに立てば人の世の無常を知れと木枯らしの吹く
肌寒き廊下を急げばこぼれ陽の顔にかかりてふとなごむ我
地を叩く雨の夜道に人もなし頼りにつかむは細き杖のみ
夜の道を酔いて歩けり杖つけばわれの孤独のカツカツと鳴る
目を病みて生きる力のわが内にかほどに強く宿りしを知る
理療教育課程三年 誠
賑やかな祭が終わり日も暮れて静かな部屋で独り「いぶき」読む
病む友の熱ある額に手をあてて何度も何度も看る長い夜
臨床で按摩を終えて疲れたる我が親指をそっと撫でてみる
ふる里の林の中に白く建つ老人ホームに春の灯ともる
木の育つ伸びゆく姿見上げつついつしか我の憧れとなり
理療教育課程三年 千加子
夕暮れに香りたよりに花を買う色とりどりにつぼみ開きぬ
時の砂柔らかく降りみな包むけれど忘れじ君の声夢
夏の夕空と野の間を風走る君の遠さに貫かれている
理療教育課程卒業生 国男
静けさにセミ鳴き騒ぐ森の中夕立となりセミはどこへやら
祭り日も朝から小雨浴衣着る花火上がりて孫の笑顔なり
夜遅く帰りゆく道はままならず音で知らせる点字ブロックの道
理療教育課程卒業生 憲男
わが家にも初めてもらうパスポートうれし怖しと息子そわそわ
理療教育課程卒業生 治子
老いること恐れずいられる年齢がいいと娘に問われわが答えたり
梅雨明けを待ちつつ鍼を打つ今日は飛行機の頻繁に過ぎゆく
虫の音はやさしくなりて静かなる朝をゆく夫とわが靴の音
老い母に鍼を打ちつつ今少し話していたいこの午後のとき
一年のはやく過ぎたり母はひとり部屋にウサギを飼いているなり
われの目にものの見えぬは夢なるか十八年の過ぎておりたり
障害を持ちたることが夢ならば覚めずともよしと時に思えり
鍼を打つひと日を終えて帰りゆく向かう空に金星光る
母とわが声低くして語るなりまなこ細めてウサギ眠れば
夜となり静まりし階登りゆくときわが使う白杖の音
理療教育課程卒業生 修一
目を閉じて耳をふさぎて風の音大地のいぶき我は聞くなり
俺は俺俺が俺がで生きてきて孤独に向かう足音を聞く
正月を初めてひとりで迎えたる五十三年更なる思い
湯を沸かすやかんの音聞き仕度する小さい部屋にトースト一枚
講師 坂本守正
ゆび触れていのちのきおうタンポポの君は意思持って学び始めたり
この夏の雲しろくして真昼なる両眼に虫のさわがしく飛ぶ
いささかの違和感のあり無花果のはなの紅きが際立ちてみゆ
職員 太田浩之
その袖の汚れいること気づかざる母は老いゆく老いて哀しく
進学も就職さえも相談はなかりきと母言いて笑えり
コーヒーの残りひとくち飲み干しき心決まりぬ雨の降る朝
旭川にわれを師と呼ぶ老よりの賀状は絶えぬこの年よりは
かく日々に向かい過ぎゆき深まれる思いかえらぬ望みありても
ひとを恋い思いおりても緩やかに過ぎゆくときよ三十三歳
別れありまた別れゆくいつよりか咲き初めしこのさくら仰げり
歓びをその哀しみを詠いゆき卒業しゆく春あさき朝
見えずとも真っ直ぐにわれを見つめ来るひとにこころに今は向かわむ
この通り歩みてゆけばふたつ三つ思いのありき港区白金
大河原惇行
朝を呼ぶ雲は光は高くなり青葉らゆらぐ川の向うに
ゆりの木を吹きてさやかなる風の音雨の並木をわがのぼりゆく
心より驚くこともまれとなり一人つとめむよしなき事に
ひめはぎか何かが少し咲きをりき夕べの道は憂しと言しべし
ゆらぎつつ花白かりき夜は夜の闇深くして空高くして
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