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理療教育課程一年 平三郎
はらはらと落ちる木の葉よセンターで思うはわが身学ぶ歳月
理療教育課程一年 安身
夏の日のケヤキ並木にせみ時雨今は亡き母を思いつつゆく
理療教育課程二年 和幸
わが部屋に幸せの鳩舞い降りて心ときめく和やかな日よ
理療教育課程三年 清
夜明けまでひんやり風のながれ来て虫の鳴く声止やまずいるとき
電車にて席を譲られ窓越しにほほに差したる陽のあたたかさ
かおり満ちふさふさたるる藤の花愛しき人を思いて過ごす
理療教育課程三年 豊延
紺碧の空を映せし芦ノ湖に白きクルーザー音立ててゆく
彼岸花咲き始めれば遠き日の亡き人たちを思い出させる
並木道落ち葉を踏めば思い出す幼き日々をふるさとの友を
理療教育課程四年 寿彦
寝苦しき暑き夜をば重ねおり気づけば虫の鳴く音聞こえて
車椅子兄貴を乗せて外に出る越後の空は雲低くして
(*)芽吹きせしぶどう棚の向こうには曾孫までいる鯉のぼり舞う
理療教育課程四年 啓三
富士の山見えぬ足もと踏みしめて登りつめれば広がる大地
理療教育課程四年 淑郎
ピピピーと鳥の鳴き声聞こえくる寮の中庭春を伝えて
理療教育課程五年 朝子
悔いのない命選べと聞きすます風にまかせて散りゆく落ち葉
めぐり会う一人のために明日ありと赤いルージュをひいてみる
学ぶこといくつもありき教科書を胸に抱きしめためいきばかり
理療教育課程五年 永久
ふるさとを訪ねし我を迎えたるわが友の声老いて聞ゆる
ラジオより桜前線流れきてわが町吹上いつと気になる
真新しい墓標の名を読む妹の声耳にして友の死を知る
理療教育課程一年 律子
スパシフィラムあなたの花と友はいうされど今われ凛と立ちたし
理療教育課程一年 壽
ぼんやりとひまわり見えた夏の日に燃える黄色に命を見ていた
せみ鳴けるふるさとの森ただ歩く三療学ぶ初めての夏
まだ見えるいくらか見えるわれの目でこれからのこと考えている
理療教育課程一年 博行
紫陽花の青震わせし梅雨寒の窓に指にて「友」と書きている
幼かりし日の友の死知らされてあぐらかくわれは十字を切りぬ
君去りてなお瞼裏に残り居る沙羅双樹より白きうなじよ
理療教育課程二年 清
冬休み日ごろの雑踏抜け出して心静かに短歌読むわれ
学期末試験を終わりまた思うがんばりきれずまた悔い残る
寒さにもこの幾日かどことなく春の息吹を知る日だまりに
理療教育課程二年 美枝子
嬉しさは探りて歩む白杖の先に広がる枯葉の匂い
まな裏に残りしものみな美しく視力なきいま歓びに似て
ひとは優し吹く風優し春の日を母の年超えし私の誕生日
理療教育課程二年 斉
あに知らんや目を病みひとり電車にて按摩習いに通うわが身を
灯にひかれ網戸にあたりて死ぬセミの庭には涼しき風吹く
机にてほほづえつけば金木犀部屋まで香りて在りし日を偲ぶ
理療教育課程三年 美佐
あの雲と同じ流れで時を生きあなたのそばにただいたいだけ
そこにいるあなたを感じ一歩また一歩ただ私は歩んでゆく
迷わずに未来へ進む道あれば人は誰でも進むだろうに
理療教育課程修了生 好明
五十路過ぎ触れる点字に汗ばみて目的ひとつ按摩師の道
理療教育課程卒業生 誠
空間と角度をみつつ運ぶ筆上達遠き書を楽しむ
我はいま世の歯車のどこにいる時はすぎゆく学べる三年
賛美歌の波にゆれる我が心ひたすら神に合掌するなり
理療教育課程卒業生 治子
亡き父と笑い転げておりたりと夢より覚めてしばしいるなり
新しく作りなおしし電話番号に今年は打たぬ友一人あり
細く細くなりし視力を保つため朝々薬を飲むという友
理療教育課程卒業生 一男
国リハでずっと学んでいたように学んでいたい卒後十年
講師 坂本守正
みづからに何に沈むのか齢わかく顔伏せる君おもてあげなさい
せいいつぱい咲きたる花はいくらかに傾げてゐたり雨の降りつつ
数日を出席せざる学生ありはりえんじゆの花夏日はつよし
講師 岡村文雄
いつしかにプレクストークの途絶えおり暗きしじまに独り目覚めいて
職員 太田浩之
曇りゆく空に憂いあり母校なる教壇に立つ試験官として
雪原を新幹線の窓に見る友よかたくなに生きてゆくのか
メールには漢字とかなの並びいる点字を文字と生まれしきみの
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